不動産売却、知っておくべき基本!⑥ ~不動産売却によって売却益が発生したら確定申告を忘れずに!~

前回のコラムでは、買主が決まったのちの、契約・決済・引渡しに向けた手続きについてご紹介しました。続いて本コラムでは、不動産売却後に必ず行う確定申告についてご紹介します。

STEP⑥:不動産売却によって売却益が発生したら確定申告を忘れずに!

不動産を売却して利益が出た場合、税金の申告が必要になります。この記事では、基本的な知識と確定申告の流れを解説します。

a.売却にかかる諸費用

不動産売却時には様々な費用がかかります。主に以下の6つの費用が考えられるため、しっかり把握しておきましょう。

①仲介手数料:不動産会社に支払う手数料
②印紙税:売買契約書に貼る収入印紙の費用
③登記・抵当権抹消費用:登記費用および司法書士への報酬支払
④住宅ローン関連費用:住宅ローンの一括返済にかかる金融機関へ支払う事務手数料
⑤譲渡所得税:譲渡利益があった場合確定申告後に発生
⑥その他:測量費・解体費・修繕費・引っ越し代等

b.譲渡所得税の基本

不動産売却による利益は「譲渡所得」として課税されます。
譲渡所得は以下の式で計算します。

譲渡所得=売却価格(取得費+譲渡費用)
課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除

取得費は、物件購入時の代金、購入時の費用、修繕・改良費等を指します。
譲渡費用は、売却時の仲介手数料、印紙税、測量費用、解体費用等を指します。
特別控除は、居住用財産の特別控除や相続財産の特例、買い替え特例等を指します。

居住用不動産の譲渡所得に対しては、所有期間に応じて税率が異なります。所有期間が5年以下(短期譲渡)であれば39.63%、5年超(長期譲渡)であれば20.315%の税率となります。
ほかにも、10年を超える所有であれば軽減税率の特例があります。

5年以上保有することで税率が大幅に下がるので、投資用不動産等の場合は売却タイミングの一つの指標になります。

c.特例制度を活用する

譲渡所得税にはさまざまな特例があり、条件を満たせば大きく税負担を軽減できます。
ただし今後、制度改正が行われる可能性もあるため、最新情報に注意が必要です。
※ここでは2025年4月時点での情報を記載します。

譲渡益が出た場合、一定の条件を満たせば、
・3,000万円特別控除の特例
・10年超所有軽減税率の特例
・特定居住用財産の買替え特例

譲渡損が出た場合、一定の条件を満たせば、
・居住用財産の買替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
・上記、どちらかの適用がある場合、その譲渡損はほかの所得との損益通算及び翌年以降の繰り越しができることになります。

以上のような特例は条件が細かく設定されているため、ご自身が適用できるか事前に税理士などにご相談することを強くおすすめします。
最新の情報はこちらの国税庁のページから確認できます。

d.確定申告の流れ

不動産売却後の確定申告は、以下の手順で行います。
初めての方でもスムーズに進められるよう、ステップごとに解説します。

i. 確定申告の必要性の確認

まず、確定申告が必要かどうかを確認しましょう。以下のケースでは確定申告が必要です。

・譲渡所得が発生した場合(譲渡益がある場合)
・譲渡損失が発生し、損益通算や繰越控除を適用したい場合
・特例を適用したい場合

給与所得者で年末調整を受けている方でも、不動産売却による譲渡所得がある場合は確定申告が必要です。

ii. 必要書類の収集と準備

確定申告には多くの書類が必要です。早めに準備しておきましょう。

必ず必要な書類

・マイナンバーカードまたは通知カード(本人確認書類含む)
・不動産売買契約書(購入時・売却時のもの)
・不動産購入時の契約書や領収書(取得費の証明)
・譲渡費用の領収書(仲介手数料、印紙税、解体費用、修繕費用など)
・源泉徴収票(給与所得がある場合)
・各種控除証明書(医療費控除、生命保険料控除など適用する場合)

特例適用時に必要な追加書類

・住民票(居住期間の証明)
・登記簿謄本(所有期間の証明)
・耐震基準適合証明書(該当する場合)
・ローン残高証明書(住宅ローン控除適用の場合)

iii. 確定申告書の作成

確定申告書は以下の書類で構成されます。

・確定申告書A または B(一般的には譲渡所得がある場合はBを使用)
・分離課税用の付表(譲渡所得用)
・特例適用のための明細書(該当する場合)

申告書の作成方法には以下のオプションがあります。

・国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(無料のウェブサービス)
・税務署での手書き作成(用紙は税務署で入手可能)
・税理士への依頼(有料だが正確性が高い)

iv. 申告と納税

申告期間と場所

期間:売却した翌年の2月16日から3月15日まで
場所:住所地を管轄する税務署
方法:窓口提出、郵送、e-Tax(電子申告)

※管轄する税務署を調べるにはこちらから!

納税方法

納付期限:3月15日まで
方法:銀行やコンビニでの納付、クレジットカード払い、電子納税など
高額の場合は「延納制度」の利用も可能(申請が必要、税額の50%は納期限内に納付、残りは5月31日まで)

v. 確定申告後について

・還付金がある場合:申告から約1〜2ヶ月で指定口座に振り込まれます
・追加納税がある場合:納付書に基づいて納税します
・修正が必要な場合:「修正申告」を行います
・特例の繰越控除を適用した場合:翌年以降も申告が必要です

vi. よくある注意点

申告期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課されることがあります。また、複数の特例を同時に適用できない場合があるので事前確認が重要です。
譲渡所得の計算や特例適用には専門知識が必要なため、不明点は税務署の無料相談や税理士に相談することをおすすめします。
そのほか、書類は最低5年間は保管しておきましょう

初めての確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、早めの準備と正確な情報収集が大切です。特に特例適用を考えている場合や高額な譲渡所得がある場合は、専門家のアドバイスを受けることで税負担を適切に抑えられる可能性があります。


ここまで読んでいただき、不動産売却後の確定申告の重要なポイントはご理解いただけましたか?
本コラムをもって、「不動産売却、知っておくべき基本」のコラムは終了します。
次回以降のコラムも楽しみにお待ちください!

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